近年,コンピュータ技術は急速に発達し,計算速度が大幅に向上したことにより,スーパーコンピュータではなく,パーソナルコンピュータを用いて複雑な計算ができるようになった.高速道路や主要幹線道路に設置されている交通検知器から得られる大容量の観測交通データを用いて,現在の交通状況を把握する計算ができる.さらに,道路区間の過去所要時間履歴を用いて,短期所要時間予測ができるようになりつつある.しかしながら,コンピュータ計算の速さのみでは,未来の交通状況を正確に把握することは困難である.時々刻々変化する交通需要パターン,マクロな交通流の移動,ミクロな車両の挙動,事故や災害等の突発事象を全て正確に予測することは極めて難しいためである.そのため,交通管制側では現在の交通状況が変化しないことを想定し,その状況を現在交通情報として提供している.現在交通情報提供により,ドライバーの交通状況に関する不確実性を低減し,経路選択行動を変化させることで,渋滞の発生が抑制できるが,現在の交通情報を継続的に提供すれば,ドライバーの情報に関する信頼度や依存度の変化が少しずつ固定化され,情報提供効果が低下する恐れがある.また,突発事象が発生した渋滞区間では現在交通状況下の所要時間と実際所要時間に乖離が生じる可能性があり,交通需要が適切に分散されずネットワークの効率性が低下することを指摘した研究も存在する.故に,現在交通情報を補完する代替交通情報に関する交通情報高度化に向けた研究が必要となってくる.本論文では,現在交通情報を代替する交通情報として傾向情報を想定した.傾向情報は現在の交通状況がどう変化するかに関する情報を矢印等で示す情報である.傾向情報提供時の効果として,ドライバーは現在の交通状況がどの方向に変化するかを知ることにより,現在交通情報提供時より交通状況に関する不確実性は低下し,交通需要が適切に分散され,ネットワークの効率性が向上することを期待している.しかしながら,実際傾向情報が提供されている区間は少なく,傾向情報提供時の効果に関する研究事例は少ない.そのため,本論文では仮想の交通状況下で傾向情報を提供する室内実験を構築し,得られたデータにより,傾向情報提供時の経路選択行動に関する考察を加えている.また,傾向情報が提供できる交通シミュレーションを構築し,ネットワークの交通状況を把握することにより,傾向情報提供時のネットワークへの影響の考察を行っている.なお,本論文は傾向情報提供時の効果に関する今までの研究成果をまとめたものであり,この研究により傾向情報がより広範囲に提供されることを望んでいる. / Kyoto University (京都大学) / 0048 / 新制・課程博士 / 博士(工学) / 甲第13798号 / 工博第2902号 / 新制||工||1428(附属図書館) / 26014 / UT51-2008-C714 / 京都大学大学院工学研究科土木工学専攻 / (主査)教授 北村 隆一, 教授 谷口 栄一, 准教授 宇野 伸宏 / 学位規則第4条第1項該当
Identifer | oai:union.ndltd.org:kyoto-u.ac.jp/oai:repository.kulib.kyoto-u.ac.jp:2433/57253 |
Date | 24 March 2008 |
Creators | 安, 隆浩 |
Contributors | 北村, 隆一, 谷口, 栄一, 宇野, 伸宏, An, Yunho, アン, ユンホ |
Publisher | 京都大学 (Kyoto University), Kyoto University |
Source Sets | Kyoto University |
Language | Japanese |
Detected Language | Japanese |
Type | DFAM, Thesis or Dissertation |
Format | application/pdf |
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